PROJECT STORY 01

常識を覆し、社会課題を改善した
次世代大型ポスト。

Amazon社と共同開発した戸建住宅用ポストQualと集団住宅用ポストのD-ALL。当時、業界No.2だったナスタをNo.1に引き上げ、再配達という社会問題を改善へと向かわせました。開発と設計を担当していた2人がプロジェクトの全貌について語りました。

MEMBER

岡田 康浩

岡田 康浩

株式会社ナスタ
商品開発・設計
1997年入社(新卒)

石原 淳

石原 淳

株式会社ナスタ
商品企画・開発
2006年入社(キャリア)

戸建住宅用ポスト Qual(クオール)

メール便の一発ポストイン。再配達のストレスからの解放を実現。郵便受けのキャパシティを大幅に改善した次世代大型ポスト。

開発のきっかけは
Amazon社からの相談。

岡田
次世代大型ポストを手がけてから、7年も経っているんですね。
石原
2013年にAmazon社からAmazonの大型メール便を投函できるポストをつくって欲しいという相談をいただいたことから、このプロジェクトが始まりました。インターネットショッピングが普及する中で、不在配達が増えてしまい、それを解決したいというものでした。それまでは住宅業界からのお引き合いが中心だったので、異業種のEC業界、それもAmazon社からの依頼が来たときは、ちょっとびっくりしましたね。
岡田
当時のナスタはポストメーカー業界で1位ではなく、2位でしたもんね。
石原
集合住宅と⼾建住宅の両方の販売チャネルを持っているメーカーはナスタだけだったので、それで相談をいただけたのだと思います。
岡田
当時の集合住宅用のポストは、盗難防止対策として投函口のサイズを小さくしていたため、メール便が投函不可能に。なんとなく業界の規格が決まっていたのですが「不在配達」という課題を解決するためには、投函口と本体を大型化するしかないという決断に最終的になりました。業界のルールを覆すような提案だったので、業界内で受け入れられるのか、少し不安でした。
石原
企画・設計・営業のメンバーで集まり、それぞれの考えや問題点を話し合う中で投函口を大型化することが最善策だと思えたので、きっと世の中も受け入れてくれるだろうと思えました。最初は心配な気持ちもありましたが、開発の途中からは少しずつ不安が消えていった気がします。
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山積みだった課題を、
一気に解決。

石原
岡田さんが担当していた設計部分は、販売開始までずっと走っている印象があったのですが、実際はどうでしたか。
岡田
通常は1種類のポストに専念して開発するのですが、このときは最終的にすべての商品の規格を一気に変えるという話になって。設計から原価の計算まで試行錯誤しました。
石原
それに加え、品質向上とコスト削減も実現しなくてはいけなくて…。
岡田
最初はAmazon社との共同開発の戸建住宅用ポスト「Qual」を手がけていました。しかし、ちょうど同じタイミングで現行のポストのコストダウンを目標とした自社工場の「生産性改善プロジェクト」が発足。「メール便が受け取れる集合住宅向けポストが欲しい」という話がちょうど営業からも上がってきて、「不在配達」と「コストダウン」の2つの課題を解決する新規格の戸建住宅用ポスト「Qual」と集合住宅ポスト「D-ALL」をつくることになりました。
石原
規格変更に伴った新たな盗難防犯対策。部品も増えて規格も大きくなったのに、コストは削減しなくてはいけなくて、本当に大変でしたよね。
岡田
構造だけでなく材料の見直しなど、課題が山積みだったので、苦労しました。⾦型に詳しい生産技術の担当者も設計チームにいてくれたので、設計視点だけではなく、生産性にも配慮した設計を実現。盗難配慮機構のナスタガードをはじめ、独自のトルクヒンジを採用することで叶えた静音対策機構(横開き扉のみ対応)、急落防⽌機構(上開き扉のみ対応)を搭載できました。
石原
機能を向上させたのにも関わらず、以前の商品とほぼ同じ販売価格で市場に出すことができたのは、社内も同業種からも反響が大きかったことを覚えています。
岡田
「売れている」と営業から報告を受けたときは本当にうれしかったです。
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日本郵便社も加わり、
シェアNo.1へ。

岡田
製品開発がある程度まとまった後は、企画の方も急ピッチで進めていきましたよね?
石原
そうですね。新しい規格の製品だったからこそ「どのように広めていくのか。販売ルートを抑えるだけでは、業界のスタンダードになるのは難しいのではないか」などAmazon社と幾度となく協議を重ねました。
岡田
最終的には流通大手の日本郵便社も加わって、さらに大きなプロジェクトになりましたよね。
石原
日本郵便社にとっても、再配達や郵便物の盗難は大きな問題だったので、盗難配慮機構のついた次世代大型ポストは歓迎されました。期待の大きさもあり、販売開始当時新しい規格サイズのポスト設置に1戸500円の補助⾦を用意したところにも表れていましたね。
岡田
この日本郵便社のキャンペーンは、業界内にかなりのインパクトを与えたと思います。
石原
企画チームは工場と密に連携を取り、生産体制を整えていきました。みんなの協力のおかげで、ナスタの製品発表に合わせて、すべてのラインアップを新しい規格サイズに切り替えられたのも結果を残せた一つの要因です。
岡田
メディアでも次世代大型ポストは取り上げられ、その後も「GOOD DESIGN AWARD」や、世界的に権威のあるデザイン賞「iF DESIGN AWARD」を受賞しましたよね。
石原
たくさん取り上げてくださったおかげで、次世代大型ポストは自然と認知され、ナスタのポストは業界のスタンダードとなりシェアNo.1を達成しました。「再配達」が社会課題化されたタイミングというのもあるかもしれませんが、本当の意味で世の中のためになった製品をつくることができたと実感しました。
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固定概念に縛られずに、
新たなヒット商品を。

石原
このプロジェクトはポスト業界に一石を投じました。一つの製品が社会課題を改善する、開発の可能性を教えてくれた案件になりました。
岡田
このプロジェクトは2013年ですから、いまだに売れ続けてくれていてうれしいです。もう一度、世の中をアッと言わせたいので、次のヒット商品を日々模索しています。
石原
このプロジェクトを経験して自分の意識がとても変わりました。なかなか自分だけの力では、チャンスをつくり出すのは難しいので。一回一回の機会を大切にして、自分でどうやって仕事を楽しんでいくか、成し遂げていくかを考えなければいけないと思います。
岡田
どんな案件であっても、良いものを世の中に提案するという姿勢を忘れずに仕事をしていきたいですね。
石原
あとは常識にとらわれず興味があったらやってみる。それが仕事の楽しさかと思います。
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